子どもが勝手に親のクレジットカードを使った場合、支払いはどうなる?未成年者契約の取り消しは有効?
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「子どもが勝手に親のクレジットカードを使って買い物をした」というトラブルが増えています。
クレジットカードが手元になくても、カード番号や有効期限、セキュリティ番号がわかっていれば、支払いは簡単にできます。
未成年者がクレジットカードで支払いをすると、事情によって、支払い金額が返還される場合とされない場合に分かれます。
民法には「未成年者の契約の取り消し」という法律があります。
取り消しが適用されると、代金支払いの義務がなくなり、未成年者が支払った代金があれば返還の請求が行えます。
(未成年者が受け取った商品やサービスは返品をします。すでに商品やサービスを使用・消費していた場合は、現状で返品が可能です)
今回は、子どもが勝手にクレジットカードで買い物をした場合、「未成年者の契約の取り消し」に当てはまるかどうかを解説したいと思います。
目次
未成年者契約の取り消しの要件
以下の要件にすべて当てはまれば、未成年が行った契約を取り消せます。
・契約時の年齢が20歳未満
・契約当事者が婚姻の経験がない
未成年者も結婚すれば、法律上は成年者と見なされます。
・法定代理人が同意していない
・法定代理人から、処分を許された財産の範囲内でない
法定代理人とは未成年者に対して親権を持つ人のこと(多くは親)です。
親権者がいない場合は、成年後見人が法定代理人になります。
親が契約に同意しておらず、許された財産(=未成年者のお小遣いや仕送り)よりも高額な場合に当てはまります。
・未成年者が詐術を用いていない
今回の場合の「詐術」とは、未成年なのに「20歳以上」、親の同意を得ていないのに「得ている」と偽っていることを指します。
・法定代理人の追認がない
・取消権が時効になっていない
時効は未成年者が成年になったときから5年間、または契約から20年間です。
取消通知書の書き方
未成年者契約の取り消しを求める場合は、以下の文面を例に取消通知書を作成します。
通知書は未成年、法定代理人(親)のどちらでも大丈夫です。
郵送前に書面をコピーして保存してから、引受けを記録できる特定記録郵便または簡易書留で送ります。
▼未成年者本人が通知を出すときの文例
取消通知書
住所
○○株式会社 代表者○○○○様
私は○○年○月○日に貴社との間で<商品名等>(価格○○円)の売買契約を締結しましたが、未成年者の私が親の同意を得ずに行ったものであり、契約の取消しを通知します。
つきましては、当該契約に際して支払いました金○○円は、至急下記の口座に振り込んでください。
銀行○○支店 普通預金 口座番号○○ 名義人○○○○
また、保管中の商品を返品しますので、送付先を指定してください。
日付
住所
本人氏名
▼法定代理人が通知を出す時の文例
取消通知書
住所
○○株式会社 代表者○○○○様
私どもの子ども○○○(○○歳)が○○年○月○日に貴社との間で<商品名等>(価格○○円)の売買契約を締結しましたが、未成年者が親の同意を得ずに行ったものであり、親権者として契約の取消しを通知します。
つきましては、当該契約に際して支払いました金○○円は、至急下記の口座に振り込んでください。
銀行○○支店 普通預金 口座番号○○ 名義人○○○○
また、保管中の商品を返品しますので、送付先を指定してください。
日付
住所
親権者氏名
未成年者取り消しが認められない場合も多い
「子どもが勝手に使った」ことを証明できれば、未成年者取り消しで支払いを免除される可能性はあります。
とはいえ、法律的には可能であっても、カード会社やアプリ会社の規約によって、難しい場合が多いです。よくある例をまとめてみました。
親の管理に不備がある
- クレジットカードが簡単にさわれる状態に置いている
- カード情報がすぐにわかるようにしている
- すぐに課金できる状態で子どもにスマホを渡している
子どもが勝手にクレジットカードを使った原因が「親のカードの管理が不十分」だと判断されると、未成年者取り消しが認められない場合があります。
例えば三井住友カードの会員規約「第2章 カードの管理」では、カードの保管や管理が不十分で不正利用された場合は、支払い義務があると明記しています。
3.会員は、カードおよびカード情報の使用・保管・管理を善良なる管理者の注意をもって行うものとします。
会員は、カードを他人に貸与・譲渡・質入・寄託またはカード情報を預託してはならず、また、理由の如何を問わず、カードおよびカード情報を他人に使用させまたは使用のために占有を移転させてはなりません。
4.カードおよびカード情報の使用・保管・管理に際して、会員が前3項に違反し、その違反に起因してカードおよびカード情報が不正に利用された場合、本会員は、そのカード利用に係る債務についてすべて支払いの責を負うものとします。
ほかのクレジットカードでも、申し込む際には、同じような規約に同意しています。
そのため、未成年者の取り消しを希望しても「カードの管理に不備があったのでは?」という理由から、応じてもらえないリスクが高いです。
ソシャゲなどの課金は支払いの免除になりにくい
最近のソシャゲなどのアプリゲームで課金する場合は、「生年月日」や「保護者の同意の有無」を求められることが多くなっています。
未成年者取り消しの条件には「未成年者が年齢を偽っていない」「法定代理人の同意を得ていない」があります。
簡単にいえば、課金する際に以下の条件に当てはまっていたときは、免除の対象になりません。
- 自分の年齢を偽った
- 「保護者の同意」を得ずに課金した
以下の画像は、パズドラで魔法石を購入する際に表示される「年齢選択」と「同意確認」の画面です。
例えば、未成年なのに「制限なしで魔法石を買いたい」という理由で「20歳以上」を選択したり、親の「課金OK」の同意がないのに「同意をもらった」として、魔法石をカード払いで購入すると一発でアウトです。
余談:成人が18歳になると、18歳19歳は未成年者契約の取り消し対象外に
現在の民法では、20歳以上が成人としています。
ただし将来的に成人年齢が18歳になると、未成年者契約の取り消しも18歳、19歳は対象外になります。
(2022年4月1日から、成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」が施行されます)
また親権者の同意なしにクレジットカードに申し込めるのも「18歳以上」になるので、成人年齢の引き下げ以降の18歳、19歳はより気をつける必要が出てきました。
勝手に課金されないための対処法
子どもが勝手にクレジットカードで支払った金額が高額な場合は、消費生活センターや法律相談を利用してみましょう。
また、常日ごろから自分以外にクレジットカードを使われないために、対策を講じておくことも大切です。
ロックアプリをインストールして、パスワードを設定する
ロックアプリを利用すると、指定したアプリを開く際にはパスワードを求められます。
アプリによっては数字4ケタのPINコード以外にも、指紋認証の登録が可能なので、さらに安全性を高められます。
また間違ったパスワードでアプリを起動した際に、内部カメラで撮影する機能があると、誰が勝手にさわったのか、すぐにわかります。
カードを放置しない、自動入力設定を利用しない
誰でも手に取れる場所に保管しない、クレジットカードの保管場所を知られないのは、もちろんですが「クレジットカードを勝手に使うのは、財布から現金を抜き取るのと同じ」と教えることも大切です。
またショッピングサイトやブラウザによっては、カード情報を記録して、次回以降の買い物で入力の手間が省ける自動入力設定が利用できます。
共有で使っているスマホやパソコンで自動入力設定をしていると、自分の知らないうちにカード払いされる可能性が高くなるので、自動入力設定は解除しておきます。
再発行をしてカード情報を変更する
クレジットカードを再発行すると、カード番号、有効期限、セキュリティコードが変更されます。
今までのクレジットカードは利用停止になるので、今後、以前のカード情報を知っていても、支払いにはいっさい使えません。
再発行手続きから1週間前後で、新しいクレジットカードが登録先の住所に届きます。
クレジットカードの受け取りは原則「本人受取」で、不在時には再配達になります。
日本郵便の「簡易書留」で郵送された場合は、家族でも受け取りが可能ですが、基本的には本人受取に限定した配送サービスで届けられると思います。
そのため、誰にも新しいカード情報を知られることなく、所持ができます。
またふだん使わないクレジットカードの利用限度額を下げるのも、一つの方法です。
多くの一般カードの場合、利用限度額は10万円まで下げられるので、仮に勝手に利用された場合の金額を最小限に抑えられます。
メール通知設定をしておく
以前、子どもが高額な課金をしたニュースで「親にバレたくなかったので、子どもが利用明細票を隠して、発見を遅らせていた」という話がありました。
一部のカード会社では、不正利用の早期発見を目的とした「メール通知サービス」を提供しています。
カード会社のメール通知サービス一例
- 三井住友カード:請求額確定通知メール
- JCBカード:安心お知らせメール
- エポスカード:カード利用通知サービス
- オリコカード:お知らせメール
- 楽天カード:カード利用お知らせメール
- au PAY カード:ご利用速報メール
クレジットカードで支払いする度や、設定金額よりも利用額が多くなった場合に、メールで通知がくるので、勝手にクレジットカードを使われた場合に、すぐに対応できます。
登録するメールアドレスは、日常生活でメインに使っているものを設定しておきましょう。
通知を切っていて、気まぐれにしかメールをチェックしないような状態だと、意味がないので注意してください。
ちなみにクレジットカードによっては、貯まったポイントをオンラインゲームの課金に使えるギフトカードに交換可能な場合もあります。
「自分の目の届く範囲で課金をしてほしい」と思うならば、上記のようなギフトカードを金額を決めて渡すのも、高額な課金を防ぐ手立てになるように思います。