ビジネスカードの明細書は領収書の代わりになるのか
会社を経営していると、商品やサービスの購入時に領収書をもらうことが日課となってきます。
「なぜ、領収書をもらう必要があるのか?」というシンプルな原点に立ち返ってみると、その答えは「税務調査において支払いを証明するため」となります。
領収書を元に帳簿の作成などを行いますが、中小企業の場合は特に、それらはすべて「税務調査でお金の使いみちが正しいことを示すため」にやると言っても過言ではありません。
領収書が支払いの証明となるのです。
では、ビジネスカードで支払いをした時に領収書の扱いはどうなるのでしょうか。あまり知られていませんが、クレジットカード支払いの場合、領収書を受け取っても意味はありません。
ビジネスカード支払いで入手できる3つの証明書
現金払いでは店員さんに「領収書をください」という必要がありますが、ビジネスカードの支払いにおいては3つの証明書が入手できます。
カード会社からの請求書
毎月1回、クレジットカード会社から送付される請求書兼明細書です。ビジネスカードの利用歴がわかります。
領収書
ビジネスカードで支払った際に「領収書を発行してください」というと、現金払い時と同じように領収書がもらえます。ただし、レジから発行した領収書には自動的に「クレジット払い」と記載されます。
クレジット売上表
カード支払いをしたお店が、レシートと一緒に渡してくれる伝票。大抵の場合、白ではなく緑色です。
請求書は領収書代わりにはならない
カード会社が毎月1回送付している請求書兼明細書は、領収書の代わりにはなりません。なぜなら、これはお店が発行したものではなく、カード会社が発行したものだからです。
国税庁のホームページでもこのように案内があります。
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではありませんから、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。
しかし、最近はネット通販で事務用品を購入したり、WEBサービスの支払いでビジネスカードを使う会社も増えています。こうした対面以外の取引では、紙の領収書を発行してもらえないケースも多いです。
ただ、100%安全とは言えませんが、時代の流れとしてこうした取引が増えているのも事実なので、カード会社が発行した請求書兼明細書は保存しておいた方が良いですし、ネット通販で買い物をした際には、その注文確認や発送案内のメールについても、保存しておくことをおすすめします。
これらの請求書やメールには、支払金額や注文日時などが記載されているからです。
領収書をもらうなら手書きの領収書が必須?
次の方法として、ビジネスカードで支払った時にレジの店員さんに「領収書を発行してもらう」という方法。
この方法であれば、領収書の発行元は「カードを利用したお店」となりますので、より確実のように思えます。
しかしこれも厳密には正式な領収書にはなりません。
現金で支払った場合は正式な領収書となりますが、カード払いだとレジ発行の領収書には「クレジットカード払い」と記載されます。クレジットカード払いは信用取引となるため、この方法でも正式な領収書には該当しません。
クレジット販売の場合の領収書
当社では、クレジットカードで買物をしたお客様に、クレジット利用伝票(お客様控)のほか、お客様の要望により、領収書を作成交付しています。この領収書には、印紙を貼付する必要があるのでしょうか。
第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)は、金銭又は有価証券の受領事実を証明する目的で作成されるものです。ご質問のように、クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであり、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実がありませんから、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。
したがって、この領収書には印紙を貼付する必要はありません。
なお、クレジットカード利用の場合であっても、その旨を「領収書」に記載しないと、第17号の1文書に該当することになります。
レジから発行された「クレジットカード払い」と書かれた領収書は、正式な領収書として認められないので、お店側は発行を拒否することもできますし、高額な支払いであっても印紙を貼り付ける必要はありません。
一方で、「クレジットカード払い」と書かれていない手書きの領収書は正式な領収書として認められます。しかし、クレジット支払いが信用取引である以上、お店側に発行の義務はありません。
商品の販売側(お店側)の立場に立つのであれば、クレジット支払いのお客さんに対しては、手書きの領収書は発行しない方が良いということになります。
クレジット売上表は領収書代わりになる
クレジットカードで支払いをすると、「クレジット売上表」という緑のレシートをもらうことができます。(上記の画像のようなものです)
この伝票は領収書ではないものの、日付や店名、金額、そして本人の名前からカード番号の一部まですべてが記載されており、支払明細の情報量としては最も多いです。
しかし、クレジットカードサービスを利用した時には、利用者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が、「ご利用明細」等を発行しているのが通常です。
この「ご利用明細」等には、1その書類の作成者の氏名又は名称、2課税資産の譲渡等を行った年月日、3課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容、4課税資産の譲渡等の対価の額、5その書類の交付を受ける者の氏名又は名称が記載されていることが一般的であり、そのような書類であれば消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになります。
国税庁 HPより
こちらの会計事務所の記事を見ても、厳密には領収書ではないが領収書と同等の効力を発揮する胸が書かれています。
よって、ビジネスカード支払いでは領収書をもらわなくてもこのクレジット伝票があれば基本的には問題がないと言えます。(とはいえ、念のために領収書をもらっておく方が安心ですが)
いかがでしたか
ビジネスカードにおいては、領収書の扱いが曖昧で厳密に「これをもらえばOK」というものがありません。
しかし、冒頭で説明したように「なぜ、領収書をもらう必要があるのか?」という原点に立ち返ると、すべて税務調査時に支払いを証明するためであると言えるので、税務調査員が問題ないと判断すれば、トラブルにはなりません。
実際に私も税務調査を経験していますが、クレジット支払いの領収書やカード会社が発行した請求書を見せて、特に指摘はされませんでした。
最悪の場合、カード会社やお店に問い合わせれば「その日に正式な取引があったかどうか?」は照会できるので、領収書をもらえるのであればもらっておく、そうでない場合はクレジット売上表をもらっておく、ネット通販などで領収書等の発行が難しい場合は、支払い完了メールの内容やカード会社が発行した請求書を保存しておくという方法で良いと思います。